三大水城のひとつ、高松城。歴史もイベントも楽しめる魅力について

香川県高松市にある高松城は、日本三大水城のひとつと言われています。

水城とは、海に直面して築かれたお城のこと。堀には海水が用いられ、海船が接岸可能であることから、日本の三大水城のひとつとされています。

そんな高松城では、2022年、「桜御門」が復元され、開門時には多くの観光客が訪れました。

歴史的建造物としてますます盛り上がりを見せている高松城では、史跡高松城跡を整備した玉藻公園にて、城舟体験や鯛のエサやり、映画上映など、多くのイベントも開催されています。

今回、高松城の魅力を探るべく、玉藻公園管理事務所の岡 一洋(おか かずひろ)さんにインタビューをしました。

玉藻公園管理事務所 

岡 一洋さん

所長

水城・高松城の魅力

──高松城の魅力について教えてください。

岡一洋さん(以下、岡さん) 高松城は、日本の三大水城のひとつと言われています。

香東川の河口にできた砂州の先端に築城され、今なお海に近く水城の面影を色濃く残しているからでしょう。堀には海水が流れ、海の魚も泳いでいます。

高松城のお堀は、安土・桃山時代に、豊臣秀吉から讃岐国を与えられた生駒親正が築城しました。水城を建てた理由は、親正が船の交通を重視していたからだと言われています。

そして場所がら、讃岐の中央だったということもあったでしょう。親正が居城したかった場所に、建てられたということです。

──現代でも海とともにそびえたつお城なのですね。

岡さん 高松城は、水門で瀬戸内海とつながっているので、満ち潮、引き潮の時間には水位も変わります。堀の中には、海の魚だけでなく、放流した鯛も泳いでいるんですよ。鯛のエサやり体験も行なっていて、「鯛願城就」と命名しています。昔から、鯛の願いを叶えた人は、その人の願いも叶うという逸話がありますので、それを元に命名いたしました。また、天守建造への願いも込められています。

「鯛願城就」をご希望される方は、ぜひ専用の浮きエサを買っていただき、願いを込めて、エサやりをしていただけたらと思います。

また、内堀では和船の遊覧「城舟体験」も行なっています。真鯛とのふれあいや、水の上からみる美しい石垣の景観などを楽しんでいただき、三大水城である高松城の魅力を体感していただきたいと思います。

※城舟体験は12〜2月は運休しています。

高松城の歴史について

──城は、当時どのような使われ方をしていたのでしょうか。

岡さん 安土桃山時代の築城当初であった高松城の姿は分かりません。

現在みられる石垣は概ね関ヶ原の戦い以降のものと考えられ、2代生駒一正、3代正俊によって現状に近い城ができたと考えられています。

生駒期は、藩主の居住場所である「御殿」が本丸にあり、政治を行う場である「対面所」が「桜の馬場」の東端にありました。また、内曲輪と呼ばれる中堀より内側には、大身の家臣などの屋敷もありました。

しかし、生駒家に代わって松平賴重が入ると、城の改修に取り組み、1670年には天守改築。その後は、東の丸、北の丸を新たに作りました。

また、大手を南から南東に移し、御殿と対面所の機能を併せ持った披雲閣が1700年に建てられ、ほぼ現在みられる形になりました。

ちなみに、披雲閣は明治維新後に老朽化によって取り壊され、大正6年に新たに建て替えられています。

松平期には城の各隅には、20余りの櫓(やぐら)などで守られていましたが、基本的には現在の役所的な場所として使われ、三の丸の披雲閣はその執務スペースでもありました。

なお、高松城の天守は、最上階が諸神の間と呼ばれ、神様を祀っていたことや、その他の階では仏事が執り行われていたことが知られています。

本丸、二の丸、北の丸などには櫓以外のものはほとんどなく、桜の馬場には御道具蔵があったほか、西の丸には薬園、東の丸には米蔵などが設けられました。

──どのくらいの人が、高松城内で暮らしていたのでしょうか。

岡さん 内曲輪と呼ばれる中堀より内側には、松平期には藩主とその家族、お世話をする方々などごく少数だったと思われますが、人数まではわかりません。

中堀と外堀の間にある外曲輪には上級家臣団の屋敷があり、数百人ないし千数百人程度は居住していたと思われます。

2022年、桜御門が復活

──2022年には桜御門が77年ぶりに復活しましたね。どのような経緯で、幻の国宝の建設がなされたのでしょうか。

岡さん 桜御門は、史跡高松城跡の建造物の中で最も史料が残っていました。それが、理由のひとつです。

他にも、桜御門を復元すると、江戸時代の景観復元にも繋がるということも理由のひとつでした。

江戸時代の人々は大手となる旭門から入り、櫓門である桜御門を潜り抜け、そして御殿である披雲閣にたどり着いていました。

──桜御門の建設で、最も難しかったことについて教えてください。

岡さん 史実に忠実な門を復元するための資料調査や、古写真の解析、類例資料の収集・分析などが特に難しかったですね。

──天守の建造にも期待したいですが、そのためにはどのような課題がありますでしょうか。

岡さん 石垣、礎石などの遺構を傷つけることなく、かつ地震などにも耐えうる安全な構造を持った天守を建てることだと考えています。

イベントも盛りだくさん!「たま藻café」や映画上映も

──先ほど、鯛のエサやり体験や城舟体験をお聞きしました。他にも面白いイベントがあるそうですね。

岡さん 2010年よりお城にちなんだ映画の上映会「高松城映画上映会」を開催しています。

私が玉藻公園の管理に携わるようになって、高松市の歴史、まちの魅力に気づき「ここには天守が聳えるべきだ」との思いで、上映を行っています。

上映会の10周年記念として、天守復元を願い制作したのが『REVERSE!高松城を復元せよ』です。 片岡愛之助主演『築城せよ!』の古波津陽監督主宰のワークショップ「主人公プロジェクト」を受講し、自分を主人公にした映画(30分のショートムービー)を低予算で制作しました。

気弱な男が「まち」の未来のために甲冑を身に纏い高松市長に直談判するストーリーです。ぜひ、ご覧いただき一緒に天守復元を願って盛り上がっていただけたら幸いです。

──他にも、カフェやヨガがあるとうかがいました。

岡さん 現在、新しい試みとして「たま藻café」を試験的に行っています。

7月1日(土)~9月3日(日)の土・日・祝(22日間)は、三ノ丸の一角にテントを立て園内案内やお土産物販売を行っています。

無料休憩所やキッチンカーによる飲食の提供もしています。

8月中旬には、高松城映画上映会を開催、10月中旬には披雲閣オリジナルコンサートを行う予定です。

先ほど申した、鯛のエサやり体験「鯛願城就」、内堀遊覧「城舟体験」の他には、高松城鉄砲隊演武、高松城お城ヨガ(4月〜9月、金曜日早朝)も実施しています。

お正月には、高松城新春書初め大会や高松城新春かるた大会も開催されます。

ご興味のある方は、ぜひイベントに参加していただき、楽しい時間を過ごしていただきたいと思っています。

高松城のおすすめスポット

──玉藻公園のおすすめスポットについて教えてください。

岡さん 天守台展望デッキからの眺望です。

他にも、堀端の通路、松樹の緑陰に吹く潮風、披雲閣周辺に整備された名勝「披雲閣庭園」、77年ぶりに復元された三の丸の正門「桜御門」、船の出入りを見張っていた月見櫓(着見櫓)や海の大手門「水手御門」が私のおすすめスポットです。

移築保存されている「艮櫓(うしとらやぐら)」が中堀に浮かぶ姿もおすすめですね。

イベントとともに園内散策も楽しんでいただけたらと思います。

──ボランティアガイドさんもいらっしゃるそうですね。

岡さん 土日祝10時〜15時を中心に園内案内を行っています。

高松城の歴史を中心に時間は約90分、披雲閣の貸館利用が無い日はガイドツアーで内部もご覧いただけます。

事前の予約も受け付けていますよ。予約は、希望日の1週間前までにお願いいたします。

玉藻公園管理事務所の取り組み

──広いお城なので、整備や修繕など大変かと思いますがいかがでしょうか。

岡さん 『史跡高松城跡保存活用計画』に基づき、文化財の保存と活用のために整備を行っています。石垣はすべてカルテを作り、またその変異を調べたりしながら、崩落しそうな場合には保存のための整備をしています。

また、披雲閣など重要文化財も地震時に倒壊しないよう耐震補強などを行っています。

文化財の活用のため、桜御門の復元、園路舗装、便益施設の整備など、予算・人員が限られた中、効果的な整備に取り組んでいます。

管理事務所の業務としては、樹木と緑地管理がメインです。現状を変えることなく豊かな緑を保つことがとても重要です。

施設の修繕は、軽微なものは管理事務所、重要文化財については高松市文化財課が担当しています。

日々の点検で修繕個所を洗い出し、連携しながら優先順位をつけて対応しています。

──最後に今後の展望について、教えてください。

岡さん 高松城天守の再現です。

築城時「のはら」と呼ばれていた港町を「高松」に改めたので、高松城は高松市の原点です。

明治の20年間の政治空白と昭和20年の高松空襲で埋もれてしまっている地域の歴史・文化・魅力の見える化を図り、市民の誇りとなり愛される玉藻公園を目指していきたいと思っております。

これから高松城を訪れる人へ

「玉藻公園公式WEBサイト」にて高松城の案内やイベント情報など詳しく紹介されています。これから高松城を訪れる方はぜひご覧ください。

香川県造園事業協同組合 玉藻公園管理事務所

2006年香川県造園事業協同組合が史跡高松城跡玉藻公園の指定管理者に指定され、史跡高松城跡 玉藻公園を管理する。

〒760-0030 高松市玉藻町2番1号
TEL:087-851-1521
FAX:087-823-6390

この記事の執筆者

荒川 あい子

ライター。地域情報サイト、医療系記事を中心に執筆中。最近の趣味は旅行、映画鑑賞、読書(主に映画評論、SF小説)

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