【愛媛県松山市】道後温泉本館再開でイベントも満載。古都の城下町や名酒も楽しめる

道後温泉本館

愛媛県松山市は、松山城、道後温泉のほか瀬戸内海沿岸の風光明媚な街です。

特に今年は国の重要文化財である道後温泉本館が改築130周年を迎え、7月11日に全館での営業を再開することから、全国からの関心も高まっています。また、愛媛県では銘酒もそろっており、グルメとともに楽しめます。

今回は、
公益財団法人松山観光コンベンション協会の観光物産振興部長の髙橋潤一郎さん、
松山市道後温泉事務所
愛媛県酒造協同組合 事務局長の栗栖美恵子さんに話をうかがいました。

公益財団法人松山観光コンベンション協会

髙橋潤一郎さん

観光物産振興部長

松山市道後温泉事務所

愛媛県酒造協同組合

栗栖美恵子さん

事務局長

古都の城下町、日本最古の湯の街に注目

松山市の古城・松山城

──松山市の観光地としての魅力からうかがいます。

髙橋 潤一郎さん(以下、髙橋さん) 松山市の観光地としての魅力は、「道後温泉」※や「松山城」などの観光資源、城下町に息づく歴史や俳句文化、瀬戸内海沿岸の風光明媚な景観や食を楽しめるほか、交通網やアクセスに優れている点も魅力の1つです。

松山市への入り口である、陸・海・空、つまり松山空港、松山観光港、JR松山駅のいずれのアクセスにも恵まれており、30分以内で松山市内に到着します。

また、市内一円に「伊予鉄道市内電車」が走り、観光施設を巡るにはとても便利です。

クルマがなくても観光ができるので、利用される方は外国人観光客も含めとても多いです。

また、女子旅でも人気の地で、「おんな一人旅に人気の温泉地ランキング」でトップに選ばれたこともあります。

※道後温泉・・・愛媛県松山市に湧く温泉である。『日本書紀』にも登場する日本三古湯の一つ。夏目漱石の小説『坊つちやん』にも描かれ、愛媛県の代表的な観光地となっている。

台湾・台北市で愛媛・松山をPR

2月には台北ランタンフェスティバルで展示

──観光客の誘客についてはいかがですか。

髙橋さん 観光客を誘客するためには3つの柱が大切です。

1つ目の柱は「情報発信」です。イベント・SNSなど愛媛・松山を知ってもらうための取り組みです。

2つ目の柱は「旅の満足度の向上」です。観光地の磨き上げやおもてなしなど口コミやリピーターの確保ための取り組みです。

そして3つ目の柱が「アクセス整備」です。交通アクセス網の整備や広域観光周遊ルートの形成、旅行商品化などです。

これらをバランスよく、また県や市との適切な役割分担や、連携を図るなかで事業効率を高めることが大切であると考えています。

その中で当協会では、1つ目の柱「情報発信」が大きな役割であると考えています。

具体的には、昨年11月に東北エリアでは初開催となる「観光・物産展」を12日間、約40店舗を集め仙台市で開催しました。

愛媛県や仙台市と姉妹都市である宇和島市、さらには地元の宮城県や仙台市と連携し、広く愛媛・松山の「食の魅力」と「広域の観光情報」を発信できたこともあり、マスコミ4社による生中継や、売り切れも続出するなど大盛況となりました。

海外向けとしては、松山は台湾・台北市と友好交流協定を結び、相互での観光PRなどにも取り組んでいます。

昨年の11月には、台湾・台北市でお神輿を4体、かき夫約300名でイベントを行い、台北市長にも参加頂き、多くの観客や台湾のマスコミにも取り上げられました。

また、今年は協定締結10周年の記念の年となります。2月には、2017年から参加している台北ランタンフェスティバルに10周年を記念したランタンや観光ブースのほか、写真家で映画監督の蜷川実花さんが制作した、松山市と台北市の交流を表現した作品を特別出展し3万人以上を集めました。

──松山市の今後の観光についていかがですか。

髙橋さん 道後温泉本館ですが、今年は特別な年となります。

改築で現在の姿になって130周年。保存修理工事を終え今年の7月11日に全館営業を再開します。さらに一段と注目を集めることになり、多くの観光客が松山市を訪れることを期待しています。

観光地では松山市のグルメとお酒を飲みながら食べながら楽しんで欲しいです。    

ここからは、それぞれの担当者から道後温泉と愛媛のお酒の魅力について語って頂きます。松山市道後温泉事務所、その次は愛媛県酒造協同組合、愛媛県酒造組合が説明します。

3000年の歴史を持つ道後温泉

聖徳太子や斉明天皇など古代史重要人物も惹かれた道後温泉

──道後温泉にとって今年は本当に特別な年です。道後温泉事務所としてはいかがですか。

道後温泉事務所 道後温泉本館は1894年(明治27年)に現在の姿に改築され、令和6年(2024年)4月10日に130周年を迎えます。

また、部分営業中の道後温泉本館の保存修理工事完了は12月ですが、約半年前倒しして、7月11日から全館での営業を再開し、2階や3階で休憩できるコースをご利用頂けるようになります。

本館改築130周年や本館全館営業再開を記念したイベントを随時開催し、節目の重なる記念の年を盛り上げていきますので、この機会に、より多くのお客様にお越し頂き、一緒に祝い楽しんで頂ければと思います。

──古くからの歴史や伝統がある温泉地ですが、その点について

道後温泉事務所 道後温泉は、3000年の歴史を誇る日本最古といわれる温泉です。

また道後温泉本館は、日本の公衆浴場として初めて平成6年(1994年)に国の重要文化財に指定されながら、今でも現役の公衆浴場として営業しています。

今年は改めて、道後温泉で古くから培われてきた歴史や文化、また道後温泉本館の価値といった道後温泉のオンリーワンの特長に着目し、その魅力を広く発信していきたいと思います。

アートを活かす「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」

──この3年間「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」を展開されてきましたが。

道後温泉事務所 「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」は、道後温泉本館保存修理後期工事期間中の活性化策として、2021年度から2023年度の3年間、アートを活かしたプロジェクトを官民連携で実施してきました。

道後温泉でのアートを活かしたプロジェクトの始まりは、道後温泉本館が改築120周年の大還暦を迎えることを記念して開催した「道後オンセナート2014」です。

その後、毎年アートイベントを継続してきましたが、これらアートを生かした取組は、道後温泉の活性化に寄与したと考えています。

──今回も引き続きアートイベントでしたが、「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」の内容について教えてください。

道後温泉事務所 3年間のプロジェクトの各年度にテーマを設けました。

2021年度のテーマは「地熱づくり」です。コロナ禍でイベント開催の制限がある中、道後温泉に関わる関係人口の構築に取り組み、アフターコロナに備えました。

この時期に、工事中の道後温泉本館の建屋をすっぽりと覆う素屋根テント膜を、画家の大竹伸朗さんが作品化し「熱景/NETSU-KEI」と名付けられました。

また、道後温泉別館 飛鳥乃湯泉の中庭では、写真家・映画監督の蜷川実花さんの写真やオリジナルの提灯で装飾した「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉中庭インスタレーション」の展示も始まりました。

2022年1月には「関係人口サミットin道後温泉」を開催し、道後温泉やアートに深いかかわりを持つ方と共に関係人口の課題や今後について、最先端の議論を深めました。

蜷川実花さん作品 ©mika ninagawa,Courtesy of Tomio Koyama Gallery / dogo2021
作品名:道後温泉別館 飛鳥乃湯泉中庭インスタレーション

その他にも、クリエイターに道後温泉地区へ滞在していただき、創作や交流活動を通して、クリエイターならではの感性や視点で道後温泉の魅力を発掘・発信していただく「クリエイティブステイ公募プログラム」を実施しました。

2022年度には、4年ぶりとなる芸術祭「道後オンセナート2022」を開催。テーマは「いきるよろこび」です。

会期は2022年4月28日から2023年2月26日と、道後温泉の芸術祭は会期が長い点が特徴です。
多くのアーティストの芸術作品を道後温泉地区に広く点在させるほか、随時、イベントやパフォーマンスを開催しました。

──2023年度は最終年度ですが、いかがでしたか。

道後温泉事務所 最終年度の2023年度は「道後アート2023」を2023年2月末まで開催しました。テーマは「アート&クラフト」です。これまでのアートの取組を続けながら、買い物の楽しさを提供し更に道後温泉の魅力を高めるため、新しい切り口で「クラフト」に着目しました。

芸術作品の展示に加え、手芸や工芸などのクラフトの要素を加えたプログラムやマルシェの要素を取り入れた「クラフトフェア」を開催しました。道後温泉地区での回遊性を高め、道後の新たなブランディングに繋がっていくことを期待しました。

行政と地元が連携して盛り上げる

清家 未来さん『工芸 x カルチャー』   ©Mirai Seike / DOGO ART 2023
道後アート2023  クラフトミュージアム 「DIRECTOR’S MARKET」

──これからの道後温泉の未来像についてお伺いしたいです。

道後温泉事務所 道後温泉地区では、これまで官民連携し、道後温泉本館保存修理工事やコロナ禍などのピンチをチャンスに変えてきました。

まずは、令和6年度の記念の年をしっかりと盛り上げていきたいと思いますが、これからも、地域の皆さんと共に、道後温泉の活性化に取り組んでいきます。

「えひめ香る地酒プロジェクト」とは!?

酵母から水、米までオール愛媛の地酒

──最後に愛媛県酒造協同組合、愛媛県酒造組合事務局長の栗栖美恵子さんに「えひめ香る地酒プロジェクト」についてうかがいたいです。

栗栖美恵子さん(以下、栗栖さん) これは愛媛県と愛媛県酒造協同組合の共同プロジェクトです。県オリジナル品種の花「さくらひめ」を使って酵母を取り出す試みを各研究機関とともに研究し、「愛媛さくらひめ酵母」を生み出すことに成功しました。

実は、「さくらひめ」からの酵母の分離培養は難しいとされていました。
清酒用花酵母のパイオニアの穂坂賢教授(東京農業大学醸造科学科)のご指導を得て、宮岡俊輔先生(愛媛県産業技術研究所 食品産業技術センターの主任技師)そして愛媛県と本酒造協同組合の産官学が協力して酵母を取り出せました。

愛媛県内の22の蔵元※がこの酵母を使い、愛媛の米と水などにもこだわり、日本酒を醸造し、2023年春に地酒ブランド「愛媛さくらひめシリーズ」による22のお酒が発売されました。

※蔵元・・・日本酒業界で「蔵元」では、「酒蔵の経営者」のことを指す。

食を選ばないお酒

──食材や料理とのペアリングを重視されているそうですね。

栗栖さん 「愛媛さくらひめシリーズ」の酵母を4つのタイプに分類し、それぞれ好みの酵母を使用され、味を生み出しています。

タイプ1は「Tropical」と名付け、フレッシュで華やかな果実のような味わいです。
タイプ2は、「Clear」で、すっきりし、清涼感のある香りです。
タイプ3は、「Well Balance」と名付け、少し酸味がありますが甘みと程よく調和しています。
タイプ4は、「Rich」とし、ふくよかでまろやかな味わいです。

食中酒では、刺身をチョイスした時は「Clear」を、ステーキやどっしりとしたお肉を食べたいときは、「Rich」を選ばれるのが望ましいです。
「愛媛さくらひめシリーズ」は食を選ばないお酒です。

日本酒輸出協会の松崎晴雄会長は、「愛媛さくらひめシリーズ」の商品カタログに掲載したテイスティングコメントを寄せて頂き、4タイプのそれぞれの楽しみ方をまとめられました。

──花酵母を使用してのお酒造りは新たなチャレンジだったと思うのですが。

栗栖さん 西条市の石鎚酒造がバラ酵母を使い、「プリンセスミチコ」というお酒を発売していますが、ほかの蔵元では花酵母を使ったお酒造りには経験がなく、はじめての試みでした。

国内外を問わず発売中です。
愛媛県、東京や大阪、名古屋などの大都市の販売店やWEB販売では、愛媛県酒造協同組合直営の「蔵元屋オンラインショップ」でお買い求め頂けます。
海外で最も多い輸出先は台湾です。

愛媛県はグルメ、お酒、器となんでも揃う

愛媛さくらひめシリーズの発表会のもよう

──お客様からの反響はいかがでしたか。

栗栖さん 花酵母自体が香りは高く柔らかい味わいです。愛媛県の農業試験場で開発された酒米「しずく媛(しずくひめ)」を使い、こちらもフルーティーなお酒ができることに相まって、瓶のふたを開けた瞬間にいい香りが周囲に漂います。

──これから日本のお酒は海外に飛躍していくものと期待されますが、「愛媛さくらひめシリーズ」もその有力な一つになればいいですね。

栗栖さん 愛媛県酒造協同組合では、欧米、オーストラリア、東南アジア、中国と商談会を行い、「愛媛さくらひめシリーズ」も従来のお酒とともに売り込んでいる最中です。

台湾の航空会社では、「愛媛さくらひめシリーズ」を飲酒の一つとして認められ、今後、台湾の飛行機でも楽しめる日が来るでしょう。

今まで愛媛県の蔵元が地元の米、お水を使用する試みはありましたがそれに酵母も加え、名実とともにオール愛媛のお酒が誕生しました。しかも純米造りを基本にしていますので、輸出にも適しています。

──愛媛県にとっても「愛媛さくらひめシリーズ」は大きな武器になりそうですね。

栗栖さん 県知事がトップセールスに回る際、養殖しているハマチやタイを振舞うほか、「愛媛さくらひめシリーズ」のお酒を必ず出しています。
「タイにはこのお酒が、ブリにはこのお酒がいい」と紹介しています。

また、地元には「砥部焼」(とべやき)※などの器もありますので、お酒、食べ物、焼き物とセールスしやすいと思います。

※砥部焼・・・愛媛県伊予郡砥部町を中心に作られている焼き物。実用性とデザイン性も高い。

公益財団法人松山観光コンベンション協会

住所:〒790-0004
愛媛県松山市大街道3丁目2-46 松山城山ロープウェイ駅舎2階

松山市道後温泉事務所

住所:〒790-0842
愛媛県松山市道後湯之町4-30(冠山事務所)
TEL:089-921-5141

愛媛県酒造協同組合 愛媛県酒造組合

住所:〒790-0842
愛媛県松山市道後湯之町10番7号1階
TEL:089-913-8030 FAX:089-913-1371

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