忘れられない景色と、美しい自然に会いに行こう。群馬県・片品村を代表する、尾瀬以外の片品村の魅力とは?

片品村は群馬県の東北端に位置し、国立公園特別保護区に指定されている尾瀬ヶ原尾瀬沼などがある場所です。

尾瀬のほか「丸沼」「武尊(ほたか)」の計3つのエリアからなり、美しい自然に恵まれた大自然の王国。絶景スポットも多く様々なアクティビティを楽しむことができ、人気が絶えない観光スポットの一つです。

今回、一般社団法人片品村観光協会(以下、片品村観光協会)の 井上 ひとみ さんに片品村の魅力についてお話を聞くことができました。

一般社団法人片品村観光協会

主査 井上 ひとみ さん

生まれも育ちも片品村。片品村のお水が大好きです。

片品村の3つのエリアと水資源について

──片品村の概要を教えていただけますか。

井上 ひとみ さん(以下、井上さん)片品村は群馬県の東北端にあり、日光白根山・至仏山・武尊山に囲まれた自然豊かな場所です。面積の約90%が森林で、大きく分けて「尾瀬」「丸沼」「武尊」の3つのエリアに分かれます。

──3つのエリアについて、それぞれの特徴を教えていただけますか。

井上さん そうですね。それぞれにキャッチフレーズをつけるなら、尾瀬エリア「忘れられない風景」という言葉がぴったりではないかと思います。国立公園特別保護区に指定されており、豊かな自然が今でも残っています。

丸沼エリア「迫力ある日光白根山」ですね。武尊エリアは赤いレンゲツツジの風景が有名なので「赤色のにぎわい」といったイメージでしょうか。

春の尾瀬ヶ原
丸沼(日光白根山、天空の足湯)
武尊のレンゲツツジ

──片品村の水資源の特徴を教えてください。

井上さん 村内には湧水源が数ヵ所あります。この湧水は、至仏山・武尊山・白根山などの2,000メートル級の山々に降った雪や雨が地下に浸透し、長い時間をかけて自然の中で濾過され各所に湧き出したものです。水質が大変優れているんですよ。

村民は古くからこの土地の恩恵として、湧水を生活や農業に使ってきました。

また、優れた水質に加えて住民による清掃・植林などの取り組みが評価され、平成20年度に環境省より「平成の名水百選」に認定されています。

ミズテル取材記事:「日本最大の高層湿原を誇る片品村のおすすめふるさと納税返礼品」について紹介しています!

井上さん 水の美しさで言えば、日光白根山の溶岩によるせき止め湖である菅沼は、原生林に囲まれた全国屈指の透明度を誇ります。

菅沼(紅葉シーズン)
「片品村 5つのゼロ宣言2050」

片品村は令和4年2月22日に「片品村 5つのゼロ宣言2050」を表明しました。
 1. 自然災害による死者ゼロ
 2. 温室効果ガス排出量ゼロ
 3. 災害時の停電ゼロ
 4. プラスチックごみゼロ
 5. 食品ロスゼロ

これら5つの具体的な取り組みを表明し、2050年温室効果ガスゼロの実現に向けゼロカーボンシティとして宣言しています。

代表的なアクティビティ、バリアフリーの観光スポット

──「水」がとても美しい場所なのですね。片品村での代表的なアクティビティについて教えてください。

井上さん トレッキングハイキングが盛んですが、夏のシーズンはカヌーSUPなどの水のアクティビティも人気です。丸沼エリアにはお子様向けのアドベンチャー施設もあります。

夏の菅沼では、SUPの上などから湖に飛び込んで遊ぶ方の姿が多く見られますよ。

冬は12月ごろからゴールデンウイークの頃までウインタースポーツを楽しむことができます。

夏のアクティビティの例
ウインタースポーツ

──ご高齢の方や乳幼児など、アウトドアのアクティビティをしない方にとっても楽しめる場所はありますか。

井上さん 尾瀬の入り口の一つである「大清水」という場所にある「大清水湿原」がおすすめです。近くのバス停や駐車場から歩いてすぐに行くことができます。

尾瀬と同じように春はミズバショウが咲き、夏にはニッコウキスゲが咲くので、小さな「尾瀬」を楽しめる場所です。

大清水湿原※のミズバショウ
※大清水湿原の木道は、車椅子でも通れるよう幅が広く設計されています。
また、公衆トイレも車椅子のまま利用できます。

井上さん また、武尊山のふもとキャンプ場になっています。キャンプ場の中はブナ林があったり武尊山の遊歩道があったりするので、そういった場所でもちょっとしたトレッキングのような雰囲気を楽しめると思います。

丸沼の方ですと、ロープウェイで上がったところにはロックガーデンという場所があります。そこから少しだけ山の方に足を踏み入れていただければ、小さなお子さんでもちょっとした登山体験ができますよ。

日光白根山ロープウェイ
天空の足湯
ミズテル取材記事:「静寂の中に星が降るように見え、名温泉を楽しむ贅沢な宿——丸沼温泉 環湖荘」について紹介しています!

10ヶ所の味を楽しめる「名水巡り」スポット

──片品村では「名水巡り」ができるそうですね。

井上さん そうです。片品村では「平成の名水百選」認定を機に、村を訪れる方々にぜひこの湧水の美味しさを直接味わっていただきたいと考えました。

しかし、場所によっては湧水源が深い山林の中にあり、自然環境を守るという方針から保存林となっているために立ち入ることは出来ません。

そこで、湧水源を持つそれぞれの地域住民の方の協力を得て、いわば村民プロジェクトとして運動を起こしました。

このようにして、村内の10ヵ所に取水設備を整え、美味しい水を求める人に便宜をはかることができるようになりました。それぞれ一番近い水源から直接引いてきています。

また、観光協会の方では「コロナ禍でも来てくださった方や村民の方が楽しめるイベントを」と考え、春の花が咲く時期に合わせて名水巡りのスタンプラリーを実施しました。

スタンプを集めた方にはノベルティをお渡ししたんですが、大変喜んでいただけました。今後の開催は未定ですが、思ったよりも反響があったので、またやりたいなと考えています。

名水スポットの一つ「花咲の出水

──とても興味深いイベントですね。名水スポットは徒歩や自転車などでまわれるのでしょうか?

井上さん 自転車は乗り慣れている方であれば可能かもしれませんが、結構距離があるので車で行かれることをおすすめしています。

取水スポットは奥まったところにあるため見つかりにくいかもしれません。ただ、それを見つけるのが面白いとファミリーの方などに喜んでいただいているようです。

それぞれの取水スポットで水を飲んだ方の中には、なんと「10ヶ所全て味が違っていた」という方もいらっしゃいました。

私たち村民は飲み慣れてしまっているので、味の違いってなかなかわかりにくいんです。なので、その感想をいただいた時は「すごい!」と感動しました。

ダム好き必見!「丸沼ダム」

──丸沼ダムはダム愛好家の方にも人気ですよね。どのような場所なのでしょうか?

井上さん 丸沼ダム「バットレス式」という構造のダムだそうです。日本ではもう6基しか現存していないということもあり、ダムがお好きな方にとっては大変貴重な場所として人気がありますね。

バットレス式ダム

バットレスダムはダムの型式のうち、水圧を受けるコンクリートの止水壁を鉄筋コンクリートの扶壁(ふへき=バットレス)で支える方式のダム。扶壁式ダムとも言われる。
丸沼ダムは、土木遺産および重要文化財に認定されている。

井上さん 以前、東京電力の協力のもと丸沼ダムの見学ツアーを実施したことがありました。その際、参加者の方がダムのコンクリートに触れながら、ものすごく感慨深い様子で過ごされていたことや、その時の皆さんの表情が強く印象に残っています。

──実際に中を見学された方の感想はどのようなものだったのでしょうか。

井上さん その時の皆さんは、言葉を発せずコンクリートに触れながら、その空間に癒されているようなご様子でした。まるで、山が好きな人が山登りをして山頂で深呼吸をした時のような、そんな雰囲気を感じました。

井上さん

「ダムを好きな方はそういう感じ方ができるんだ、すごい!」と思いましたね。

──そうなんですね。また、ダムカードは人気ですよね。丸沼ダムでももらえますか?

井上さん はい、ダムの写真を撮って片品村観光協会へ提示いただいた方に「丸沼ダムカード」をお渡ししています。ご希望があれば「砂防(砂防ダム)カード」も一緒にお渡しをしているのですが、意外とこちらも人気です。

また、片品村で宿泊した際の領収書を提示していただければ、「プレミア丸沼ダムカード」をお渡ししています。

道の駅「尾瀬かたしな」では「丸沼ダムカレー」を提供しているのですが、そちらでも丸沼ダムカレーを注文されたお客様には「丸沼ダムカレーカード」をプレゼントしており、片品村に宿泊されたお客様には、同じく「プレミア丸沼ダムカレーカード」をプレゼントしています。

左:丸沼ダムのダムカード、右:丸沼ダムのプレミアダムカード

──丸沼ダムカレー、とても気になります!

井上さん 丸沼ダムカレーは限定30食で提供しています。東京電力監修のもと製作しているので、忠実にダムの形が再現されています。紅葉の季節であればニンジンを多く入れるなど、季節に合わせたアレンジもしているんですよ。

丸沼ダムカレー

片品村のおすすめ体験、特産物、グルメ

──屋外でのアクティビティは多くあると思いますが、屋内で体験できることなどはありますか。

井上さん 人気があるのは木炭アクセサリー製作体験ですね。片品村の伝統産業である木炭を使って、アクセサリーやオブジェなどを作ることができます。

また、野菜の収穫体験で、種類によっては屋内でも体験できるので、天候が悪い時にご案内することもありますね。

収穫体験全体をご紹介すると、ジャガイモ、ブルーベリー、なす、ピーマンなどが代表的です。秋はりんご狩りができます。収穫した野菜を、その日の夕食に食べて楽しめるような施設もありますよ。

木炭アクセサリー製作体験
野菜収穫体験
りんごなどの収穫体験

──片品村の特産物やグルメについて教えてください。

井上さん 片品村の高原野菜は大地の恵みと美味しい水、昼夜の気温の寒暖差によって育まれるため、甘く美味しいと大変好評です。

特にとうもろこし糖度がとても高く絶品なので、ぜひ一度食べてみてほしいです。

また、片品村は元祖・舞茸栽培の地でもあります。 温度や湿度、栽培期間にこだわり、より天然に近い歯ごたえや香りが追求されています。名物の「舞茸丼」はもちろん、舞茸天ぷらに片品そばを合わせていただくのも絶品です。

物品販売もしています。実際に持ってみると、とてもずっしりしていることがわかると思いますよ。

焼きとうもろこし
舞茸丼

──とても美味しそうですね。お土産でおすすめのものはありますか?

井上さん トマトジュースも人気があります。「同じ味のものをもう一度飲みたいと思ったら、1年後の同じ時期まで待つしかない」というくらい、採れたトマトの時期によって味が違うので、様々な楽しみ方ができると思います。

新しく登場した、湧水を使用したクラフトビールなどもお土産として人気がありますね。

片品村のトマト
宿泊施設で提供されているほか、道の駅などでも購入できる

気候温暖化による影響

──今、1番課題だと感じていることは何ですか。

井上さん 気候の温暖化による、スキー場の雪不足が1番課題であると感じています。以前は11月下旬にはオープンできていたところも、最近ではほとんど12月のオープンになってきています。

積雪も、一気にドカッと降ってしばらく降らないというような降り方をするので、村民もそれに対応しなければならず、生活に支障が出やすいと感じています。

今までは夏もエアコンの必要はありませんでしたが、今年の夏はさすがにエアコンを設置する宿泊施設も増えました。

気候の変化による農作物への影響も出ています。不作になるものもあれば、逆に糖度が増したものもありますので、一概に悪い影響があるとは言えないですが…。

また、今年は気候の影響で紅葉の色づきがとても鮮やかになったこと、暖かい日が続いていたおかげで長く紅葉を楽しめる日が続いたことは良かったです。

──特に、冬の積雪量の影響が深刻ですね。ウインタースポーツに代わるような対策は何があると思いますか?

井上さん コロナ以降、観光に来られた方などに向けて「片品村の何に興味を持っているか」というアンケートを取らせていただいたところ、「温泉」という回答がダントツで多く得られたということがありました。

レジャーやアウトドアではなく「温泉」が1位になっているということに、コロナ禍以降の皆様の意識が変わってきていると感じています。やはり、現在は温泉などによる「癒し」の効果を得たいと考える方が多いのではないでしょうか。

片品村には200弱の宿泊施設9つの温泉エリアがありますので、今後はウインタースポーツを最優先にはしつつ「温泉」にも力を入れていきたいと考えています。

花の駅・片品「花咲の湯」

訪れる方にも、村の子どもたちにも感じてほしい「片品村の魅力」

──改めて、片品村に対して今感じていることを教えてください。

井上さん 改めて片品村の魅力を考えると、やはり高い山々に囲まれた田舎の風景や、四季折々見せてくれる風景の美しさ美味しい水と空気村全体に自然があふれているところだと感じています。

井上さん

訪れた方には、片品村の自然やゆったりした時間の流れ方田舎の人のあたたかさなどに触れて、まるで自分の地元に帰ってきた時のような気持ちを感じていただけたら嬉しいです。

また、個人的には片品村の子どもたちに片品村の素晴らしい自然環境や、水、食べ物などにもっと誇りを持ってほしいと思っています。

幼い時にそれを意識しながら過ごすことはなかなか難しいかもしれません。しかし、いつも美味しい湧水を安心して飲めることや、いつも新鮮な野菜などを食べられることなどは決して当たり前じゃないし、本当に贅沢なことなんだと私自身が大人になって感じているので、子どもたちにも伝え続けたいですね。

針山の天王桜

一般社団法人片品村観光協会

〒378-0415 群馬県利根郡片品村鎌田3964
TEL:0278-58-3222
FAX:0278-58-3213

この記事の執筆者

吉田 さやか

不動産管理業・フリーペーパー広告営業・アパレル企業の事務・認知症高齢者向け介護施設スタッフ等の職種を経て、現在は4歳の娘を育てながらライターとして活動中。北陸育ち、関西在住7年、首都圏在住13年目。

新着記事