遠山郷は長野県飯田市の南部と静岡県の県境に位置する、山と渓谷に囲まれた山村です。重要無形民俗文化財の「霜月祭り」や、にほんの里100選に選ばれた「下栗の里」、平成の名水百選に選ばれた「観音霊水」など、数々の魅力があります。
今回は、遠山郷観光協会の菅原慎一さんに遠山郷の観光スポットと魅力についてお伺いしました。
遠山郷観光協会
菅原 慎一さん
遠山郷とは?
――遠山郷とはどのようなところですか?
菅原 慎一さん(以下、菅原さん) 遠山郷では、弥生土器等も出土しており、かなり昔から人々が住んでいたとされています。
山脈と山脈に挟まれていることから、かつては「遠山谷」と呼ばれ、人々は自給自足を基本とした暮らしを送っていました。
戦後は林業が盛んに行われていた地域でもあり、他の地域から働きに来る人も含めると村の人口は今の3倍近くだったとも言われています。人口は減少傾向ですが、コロナ禍を機に引っ越してきた移住者もいます。
ちなみに私も遠山郷の自然と人に惹かれて、14年前に東京から移住してきました。
現在はダム工事や治水工事が進み、遠山川の氾濫による被害は少なくなりました。しかし、かつては水害に悩まされることが多かった地域でもあります。
水害が特にひどかった当時の人々は、田畑や家、人の命を奪う川を崇拝していました。氾濫した場所や危険な場所に「水神」と彫った石碑を立てたため、遠山郷ではさまざまな場所に水神様がいるのです。
遠山郷の豊富な観光スポットをご紹介
――遠山郷の観光スポットについて教えてください。
菅原さん 遠山郷には数々の有名な観光スポットがあります。
2009年、「にほんの里100選」に選ばれた「下栗の里」は、景観の美しさがオーストラリアのチロル地方に似ていることから「日本のチロル」とも表現されています。季節によって異なる景観をぜひ堪能していただきたいですね。
昭和7年に建てられた木造校舎の「旧木沢小学校」もおすすめスポットの一つです。
「旧木沢小学校」がある遠山郷木沢地区は、上町・下栗・和田を結ぶ秋葉街道の要所に位置する宿場町で、遠山森林鉄道の起点として栄えた地域でもあります。
「旧木沢小学校」は平成12年に廃校となり、現在は資料館やイベントスペースとして地域内外の交流の場となっています。バイク好きの方々がバイク乗りのためのイベントを開催する際の拠点や、ドラマの撮影などにも利用されます。
イベントを通じて地元の人と交流を深め、何度も訪れてくれる方も少なくありません。運が良ければ、学校に住み着いている「猫校長」に会えるかもしれませんよ。
450年以上前から湧き続ける名水
――遠山郷には名水もあるそうですね。
菅原さん 自然豊かな遠山郷を散策するときに、ぜひ立ち寄っていただきたいのが「観音霊水」です。
南アルプスの池口岳の水脈から、数億年前の石灰岩層を何十年もかけて溶かし、取水口である盛平山に辿り着いたと見られています。その歴史は古く、整備されたのは450年以上前。
地元の人々で結成された「観音霊水を愛する会」を中心に定期的に水源と給水場の掃除をしていることもあり、これまで一度も水が涸れたことがありません。
平成20年には環境省の「平成の名水百選」にも選定されました。
観音霊水の特徴は硬度が高いこと。カルシウム・マグネシウム・炭酸水素の含有量が非常に多い一方、硬水とは思えない口当たりで人気を博しています。
また、汚れの指標となる塩化物イオンが少なく、常温保存をしても日持ちするため、ポリタンクで大量に給水をする人もいますね。休日は県外から訪れる方も多く、行列ができています。遠山郷へ来た際は、ぜひ足を運んでみてくださいね。
遠山郷の魅力を全国へ
菅原さん 遠山郷観光協会では、村の活性化や地域外の方々との交流機会創出を目指し、活動しています。地域内外の人々の交流の機会づくりを役割とし、様々な事業やイベントの企画実施を行っています。
古くからの歴史が色濃く残る遠山郷。
地元住民は伝統を大切にする一方で、素朴な人柄の人が多く、近年は移住者も見られる地域です。まずは一度足を運んでいただき、遠山郷の大自然を感じていただけたら嬉しく思います。お待ちしております!