協和キリン株式会社は医薬品の研究・開発・製造を主な事業とする製薬会社です。1949年の創立以来、画期的な新薬を世に送り出してきました。
同社は水は医薬品の製造には欠くことのできない重要な資源だと考えており、社会の持続性へのインパクト・グループの事業へのインパクトといった2つの観点から、「水資源管理」に重点的に取り組んでいます。
今回は協和キリン株式会社が大切な水を守るために行っている取り組みやその成果について、CSR推進部の池田宗弘さん、コーポレートコミュニケーション部の戸室みさとさんに伺いました。
協和キリン株式会社
池田 宗弘さん
CSR推進部 環境安全グループ マネージャー
協和キリン株式会社
戸室 みさとさん
コーポレートコミュニケーション部 PRグループ
節水・水源保全は企業として必須の取り組み
──御社の事業内容とこれまでの歩み(沿革)について、お聞かせください。
戸室みさとさん(以下、戸室さん) 弊社は医療用医薬品の研究開発・製造・販売及び輸出入等を行っています。
2008年に協和発酵工業株式会社とキリンファーマ株式会社が合併し、現在の協和キリン株式会社が発足しました。
すべては、病気と向き合う人々の笑顔のために。両社が培ってきた経験と実績を受け継ぎ、多様な創薬技術を駆使して新薬の研究開発に日々挑んでいます。
──御社では節水と水源の保全活動に取り組んでいると伺いました。このような取り組みをされているのはなぜでしょうか?
池田宗弘さん(以下、池田さん) 水は医薬品の製造には欠くことのできない重要な資源です。
その一方で、水は気候変動などの問題と絡み合い、干ばつや洪水といった災害を引き起こす原因ともなります。
ですから、自然の恩恵を受けて事業活動を展開している私たちにとって、節水や水源保全など環境問題に向き合うのは必須のことだと考えています。
社会全体の持続性や協和キリングループの事業への影響といった観点から、特に重点的に取り組むべき環境に関する課題を中期経営計画へ組み込み、各種施策を展開しています。
その中でも特に「水資源管理」は主な課題のひとつです。単年度目標に加えて中長期の目標を設定し、着実に進めています。
節水によって2022年には水使用量(取水量)33%削減を達成
──医薬品製造において使用する水を持続可能な状態にするため、取水量の削減に取り組んでいると伺いました。具体的にはどのように取り組まれ、どんな成果がありましたか?
池田さん 弊社では、以下の取組み等を実施する事により、2030年の取水量削減目標2019年比40%削減に対して、2022年には取水量33%削減を達成しています。
さらに、取水量削減の年度目標も設定して節水意識を高めています。
水使用の効率化も図るため、毎年、事業場ごとに取水量の目標も設定し管理しており、2022年は取水量原単位を前年比9.7%削減しました。
20年以上続く「水源の森づくり活動」
──日本各地で、工場の水源地を守る「水源の森づくり活動」に取り組んでいらっしゃると伺いました。この活動では具体的にどんなことをされますか?
池田さん 協和キリン高崎工場および宇部工場にて、下草刈りや植林、間伐作業を実施しています。これにより健全な森の育みが促され、水源保護にも役立っています。
また、「水源の森づくり活動」は社員ボランティアによる活動です。そのため、環境保全の意義を社員が感じたり、事業場の周辺地域との共生の意識を高める機会にもなっています。
この活動は2008年の会社統合前から実施しており、高崎地区では20年ほど継続して取り組んできた歴史があるんですよ。
──その他にも、水の恵みを守る活動を実施していると伺いました。具体的にどのような活動をしていますか?
池田さん 先に紹介した水源の森活動とあわせて、地域の方々とともに生態系を守る活動に取り組んでいます。実際の取り組みは以下の通りです。
これらの活動を通じて、地域コミュニティの育成と自然環境美化・生き物の多様性を守る意識の向上につなげていきたいと考えています。
水を守るだけでなく、水リスクへの備えも
——サプライチェーンの強化・効率化により水災害時のリスクを最小化することを目標に掲げられていますが、御社で行っている具体的な取り組みについてお聞かせください。
直近では、高崎工場の新棟(Q-TOWER)が水災害対応の例に挙げられますね。
水リスク分析やハザードマップなどの調査によると、高崎工場では自然災害による浸水被害がリスクとして想定されています。
これらの水害(浸水)への対策として、本年竣工したQ-TOWER(※)は、防水機能を持った建物として設計・建築されているのです。
(※Q-TOWER・・・品質保証関連複合施設(Q-TOWER)。バイオ医薬品の製品、原料の品質分析等の品質管理及び品質保証に関連する業務を行う。)
同じく、宇部工場でも高潮による浸水リスクが想定されています。これに対しては、宇部工場の主要設備(敷地)を取り囲む防潮堤の建設が取り進められています。
また、その他の重要な施設・設備などについても高所・高層へ配置したり、他の地域に分散して保管するなど、リスクが低くなるよう努めています。
再生可能エネルギー導入により2023年末にはCO2排出を約53%削減の見通し
──気候変動の克服に向けて行っている具体的な取り組みについて教えてください。現在どのような取り組みを進めており、どのような成果が出ていますか?
池田さん 弊社では、2030 年CO2排出量削減目標55%削減(2019年比)の達成に向けて以下のように取り組んでいます。
①設備投資を含む省エネルギー施策の推進
②再生可能エネルギー導入・拡大施策の推進
③太陽光発電設備導入の推進
現時点では、国内の主要事業場である高崎工場・宇部工場・富士事業場・並びに本社で全ての購入電力をRE100(※)の基準に適合した再生可能エネルギーに切り替えています。
(※RE100・・・企業が事業活動で使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことを目標とする枠組みのこと)
また、太陽光発電設備導入の推進においては、宇部工場で大規模太陽光発電設備が2023年3月より稼働・供給を開始しています。
太陽光発電装置は国内各事業場にも設置しており、事業場使用電力の一部として活用されています。
また国内だけでなく、中国・上海の海外工場(協和麒麟(中国)製薬有限公司)でも大規模な太陽光発電設備を設置し、事業場電力として使用しています。
これらの取り組みにより、2023年度末にはCO2排出量を約53%削減(2019年度比)できる見通しです。
──今後の展望についてもお聞かせください。
池田さん 2024年以降も継続的に国内外の全事業場および国内全オフィスに、RE100を満たす再生可能エネルギーを順次導入し、切り替えていくつもりです。
また、高崎工場で竣工予定の新バイオ医薬原薬製造棟では太陽光発電パネルの設置、排熱利用設備の導入を予定しています。
2030年以降はこれら取り組みに加えてエネルギー転換(※)なども進め、2050年ネットゼロ(※)達成に向け対応を進めていきます。
(※エネルギー転換・・・再生可能エネルギーも含め、より環境負荷の少ないエネルギーに転換していくことを指す。化石燃料からガス・電気への転換、ガス・電気から水素への転換など)
(※ネットゼロ・・・温室効果ガスの排出量を正味ゼロにするという考え方。排出量から吸収量を差し引いた合計がゼロになればよい)
SDGsを発信するオウンドメディア『MIRAI PORT』を設立
──御社ではSDGsに関する情報を発信するオウンドメディア『MIRAI PORT』を運営されていると伺いました。MIRAI PORTの運営を始めた経緯についてお聞かせください。
戸室さん MIRAI PORTを立ち上げたのは2019年です。
当時、特に若い世代の中でSDGsのような社会課題解決への関心が高まっていました。そんな中、当社の社会貢献活動の情報についても触れていただく機会を増やそうと思ったのがきっかけです。
MIRAI PORTでは、地球環境保全や多様性推進、また、疾患啓発や研究開発などの記事を読めますよ。製薬会社としての事業と社会とのつながりも、テーマとして取り上げています。
──『MIRAI PORT』の運用において心掛けていることはありますか?
戸室さん このサイトでは取り組みそのものの紹介に加えて、担当者の想いを伝えることを大事にしています。
また、弊社の活動以外にも興味深い事例を取り上げたり、SDGsに関する解説記事も発信しています。
様々な事例や当事者の生の声に触れていただき、読者の方が何か行動を変えてみようかなと思ってもらえるようなヒント、きっかけになればと思っています。
協和キリン株式会社
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