世界の社会課題の解決とサステナブルな社会の両立を目指す株式会社DG TAKANO。
2009年に開発した「Bubble90」、2023年に発売した「meliordesign」など、革新的な製品開発を手がけてきました。これらの製品による1年の節水量は、大阪市民が1ヵ月に使う水量に匹敵しているそうです。
これほどまで節水に貢献できる秘密は何なのか、株式会社DG TAKANO社員の都筑亜美さんにお話を伺いました。
株式会社DG TAKANO
都筑 亜美さん
「課題解決方法をデザインする」デザイン会社
――株式会社DGTAKANOとはどのような会社ですか?
都筑亜美さん(以下、都筑さん) 株式会社DG TAKANOは、社会課題の解決とサステナブルな社会を実現するデザイン会社です。東京に本社を置き、東大阪に工場を持っています。
当社における「デザイン」とは「設計」であり、「課題解決方法をデザイン、設計する」こと。
現在は水不足の問題を解決する方法のデザインに取り組んでいます。当社は環境の負荷をかけずに、水不足という問題を節水で解決している会社です。
ちなみに、DG TAKANOのDGとは「Designers Guild」の略です。
「Designers」は、自分の人生・未来・社会をデザインするという目標を持った人たちという意味。「Guild」は、ピラミッド組織ではなく、共通のビジョンに向けて自立した個人同士が、それぞれのスキルや経験を統合し、主体的に取り組む組織です。
環境負荷をかけず水不足を解決するには、水の使用量を減らすこと。
――どんな製品を保有していらっしゃいますか?
都筑さん 当社の製品は主に2つあります。1つが「Bubble90」という節水ノズルです。蛇口の先端に付けると通常の蛇口よりも最大95%の節水ができます。
2つ目が「meliordesign」という食器です。水だけで、汚れも細菌も落とすことができる食器です。
水不足に対して解決する方法は2種類あると考えています。
1つは水自体を増やす方法です。
これは海水を真水に変えて水の量を増やし、一般の家庭に普及させるという手法です。しかし、この方法はエネルギーを使用するので、環境負荷がかかってしまいます。
一方で2つ目の方法は使用する水の量を減らすことです。これは環境負荷がかからない方法で水不足を解決する方法だと捉えています。
2つの製品に共通しているのは、環境負荷をかけずに水不足という問題を節水で解決する製品だということです。
洗浄力と節水能力を両立させた世界初のノズル
――「Bubble90」はどんな製品ですか?
都筑さん これまでの節水ノズルは、水の出す量を調節する製品ばかりでした。多くは洗浄力が落ちるだけで洗う時間が増えてしまい、効率的な節水につながっていませんでした。
Bubble90から出る水は脈動流と言われる特殊な水です。ひとつひとつが水の玉のような形ででてくる技術になります。水の玉が連続して出てくるので、マシンガンのようなイメージですね。
その水の玉がそれぞれ汚れに当たっていくので、無駄なく効率的に水を洗浄に使える仕組みになっています。
洗浄力と節水能力を両立させた世界初のノズルです。
――どのように開発をすすめられていったのですか?
都筑さん 当社の代表は「まだ世に無い新しいモノを作りたい」、「社会課題を解決し、みんなが欲しがるモノを生み出したい」という思いがありました。
数ある社会課題から、自分が貢献できるものを検討し、水不足の問題に着眼しました。
元々、代表の父親は東大阪の町工場で金属切削加工の高い技術を有していました。
この技術を使えば水の使用量を削減することが可能になるのではないかと、開発を進めたのが始まりです。
大企業をターゲットに販売を開始しましたが、当時は節水にあまり目が向けられていませんでした。
しかし、2014年ごろから売り込み先を飲食店に変えたところ、急速に普及していくことになります。
「まずは1、2ヶ月使ってみてください」とBubble90を無償で取りつけさせてもらいました。
再度お伺いした時には「100万かかってた水道代が60万に削減されました」と喜びの声をいただくこともありました。
現在飲食店には大手チェーン店をはじめ、41,000店舗に導入いただき、約30万個が出荷されています。これまでの総節水量は東京ドーム100個分に及んでいます。
水だけで汚れも細菌も全てを落とせる食器
――「meliordesign」とはどんな製品ですか?
都筑さん 水不足を解決するため、Bubble90の次に目を付けたのが洗われる側のお皿です。水を出す方と洗われる方で工夫すれば、より多くの水を節水できるのではないかと開発を始めました。
最大の特徴が、水だけで汚れも細菌も落とせることです。
今までの食器洗いは洗剤を使用することが一般的でしたが、これに対して当社のmeliordesignは水だけでお皿についた汚れを落とすことができます。
水を大幅に削減できるだけでなく、食器洗いの工程や時間の短縮が可能です。
例えば1日2回、朝と夜に10分ずつ洗い物したとすると、年間10日ほど洗い物に時間を費やしていることになります。
meliordesignは食器洗いにかかる時間を大幅に削減するため、お掃除ロボットやドラム式洗濯機と同様に時短が実現できる製品です。
――本当に水だけで汚れが落ちるのですか?具体的にはどのような仕組みなんでしょうか?
都筑さん 独自のナノテクノロジーをつかった表面改質技術です。この技術により汚れとお皿の間に水が入り込むことで汚れが浮かび上がり、水だけで汚れや細菌を洗い落とせます。
――どこで購入できますか?
都筑さん 当社のECサイトにてご購入いただけます。
世界の水不足に貢献する会社
――今後の展望をお聞かせください。
都筑さん Bubble90は100%業務用で販売している製品です。一般のご家庭でも使用可能な、Bubble90を内蔵した蛇口を開発し、現在は予約販売を開始いたしております。
meliordesignは、現在お皿のみを製造・販売しています。
しかし、他の調理器具にも技術を応用して、将来的にはまな板や包丁もすべて「水だけで洗浄可能な世界」を目指しています。
金属に加工できれば、スプーンやフォークのカトラリーにも応用ができます。樹脂、プラスチックに応用ができれば、次はお弁当箱にも使用可能です。
今後も、Bubble90とmeliordesignの製品を世に広めていき、水不足という社会課題を解決することに貢献していきたいです。
株式会社DG TAKANO
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