1万本売れた「電子レンジで温め直せる1/1タンブラー」人気商品の開発秘話に迫る

ステンレス製のタンブラーなのに、電子レンジで温め直せる?!

そんなユニークな商品を開発したのは、東京都足立区に本社を置き、多彩な日用品を製造する株式会社シービージャパンです。

一体、タンブラーの構造はどうなっているのでしょうか。今回は「1/1タンブラー」の開発者である脇田 俊治(わきた としはる)さんにお話を伺い、商品の魅力から開発秘話まで教えていただきました。

株式会社シービージャパン

脇田 俊治さん

朝のコーヒーはぬるくなる!1/1タンブラーの開発きっかけ

1/1タンブラーは2層構造です。冷めたら内側のインナーカップを外して、電子レンジで温め直せます。

また外側のアウタータンブラーはステンレス製なので、保温機能に優れています。

──開発のきっかけは、何かありましたか。

脇田さん 会社の近くにセブンイレブンがあるんですけど、毎日朝出社前にコーヒー買って、それ持って出社して机に座ります。

朝なのでメールやいろいろチェックしてると、そのまま会議入っちゃったりとか。

朝って結構バタバタしてるので、飲むタイミングっていうのを失ってしまうんですよね。

──それは残念ですね。

脇田さん いつも飲もうかなって思うとぬるくなっちゃってる。みんな経験してると思うのですが僕もそれを繰り返してました。

しかも朝買って、お昼は外に食べに行って、帰りにまたコンビニに寄って机に戻ると、朝のコーヒーはぬるくなっちゃってる。

お昼に買ったやつも、仕事に没頭してると結局ぬるくなる。

机の上にはぬるくなった二つのコーヒーがいつもあって、あったかいのから飲むから、冷めたのはどんどん冷める……を繰り返していました。

──本当に実体験ですね。

脇田さん そうですね。それでちょっと温め直せたらいいんじゃないか、というところから生まれた商品が「1/1タンブラー」です。

クラウドファンディングのMakuakeで先行販売した際には、「1/1タンブラー」はあっという間に完売し、話題になりました。

──脇田さんの実体験に、多くの方が共感したのでしょうか。

脇田さん そうかなと思います。

コメントを沢山いただきまして、同じようなことを感じていた方が多く、「こんな商品を待ってました!」というような動機で買ってくれています。

──1/1の商品名は、インスピレーションなのか、それとも何か意味のある言葉なのかというのを伺ってもいいですか。

脇田さん 商品の特徴から生まれた商品名でして、1本で1年中使えるという意味で、1/1という名前にしました。

──冷たいものも、温かいものもという意味ですか。

脇田さん そうですね。

1/1タンブラーは、コーヒー・お茶・紅茶が作れるフィルターが付いている!

──1/1タンブラーはフィルターが付いていますよね。すごいです。

脇田さん ありがとうございます。最初は温め直せるという機能だけを付けようと思ってたんですよ。

ただ、そうすると冬場しか活躍できないので、フィルターも作ったんです。

──そんな背景があったのですね。

脇田さん フイルターを付ければ、いろいろな飲み方ができるので。

温め直せるという冬にしか活躍しないものではなくて、プラスほかの季節でも使えるというところで足しました。

──脇田さんの開発に対する意気込みが感じられるエピソードですね。つまり1/1を貫いて、一年中使ってもらえるようにしたと。

脇田さん そうですね。あとはビジネス的な発想もあって、これは商品と……関係なくはないのかな。つまり売り場では、冬場の訴求のボトルって冬場しか置いてもらえないんです。

ただ一年中という訴求を加えられたら、一年中置いてもらえるので、そういう狙いがあります。

デザインは脇田さんが担当。設計はイラストレーター?

──設計のお話も、伺っていいですか。

脇田さん はい。設計は僕のほうで、イラストレーターを使って形とか、スペックとか、大まかなことは決めて、絵で工場のほうにお願いしました。

そして製造には金型という物を作らなくてはいけないので、金型への落とし込みは工場のほうにお願いしたというところですね。

──実際の細かいサイズとかは、製造の現場にお任せしたということですか。

脇田さん いいえ、ほぼほぼこちらでサイズ感とかデザインは作りこんで、工場に投げます。

ただし、金型を作る時の図面が我々は引けないので、そこを工場の方にお願いしました。デザイン自体は、僕が作って送ったデザインから、そんな変更はないです。

──思っていたものがそのまま、生産できたということですね。

脇田さん はい。

販売累計1万本を達成!そこには製造所との苦労が。

──製造場所は中国ということですが、国をまたぐ難しさありましたか。

脇田さん ニュアンスって結構日本人同士だと伝わるのですけど、細かい、すっごく細かいところまで言わないとなかなか伝わらないという難しさがあります。

同じ国の人同士なら、ちょっとしたニュアンスってなんとなくの流れで分かる部分はあるのですけど、そこは本当に細かく細かく伝えないと、あれ?言ったのにやれてない、みたいなことがありました。

──現地の方は、日本語が使えましたか。

脇田さん やっぱりカタコトなので、なかなか伝わりづらかったです。

──そういう交渉も、脇田さんご自身がなさるのですか。

脇田さん そうです、直接。

──なるほど。「1/1タンブラー」は、実店舗でも販売されてますか。

脇田さん そうですね。

──雑貨屋さんみたいな、そういうところですか。

脇田さん 雑貨専門店さんが多いですね。

──最初の売上が900本、一気に売れましたね。これはちょっと前のお話でしたっけ。

脇田さん ちょうど1年前ぐらいだと思います。

──累計販売数はどのぐらいですか。

脇田さん 累計ですと、1万2000本を販売しています。

──シービージャパンさんとしては、ヒット商品と言えるでしょうか。

脇田さん そうですね。うちの会社の中でもよく売れてる商品だと思います。

──ちなみに、ボーナスは出ましたか。

脇田さん あ、全然そういうのはないです(笑)。あったらいいですけどね。

開発にかかった費用・期間について

──デザイン画から実際の製品ができるのは、どのぐらいの期間がかかるものですか。

脇田さん 製品によるのですけど、金型から作ってやるとなると、やっぱり早くて半年、長くて10カ月くらいはかかっちゃいますね。

──開発にはお金もかかりますよね。例えば、その金型というのは、万(円)単位の物ですか。

脇田さん 金型はもう、数百万円単位です。

──数百万円ですか!

脇田さん はい(笑)

開発商品が家電だと何千万(円)単位にもなるのですけど、こんな小さいものでも、数百万かかると思います。

私たちの役割は「作り続けること」

──今後の展望を教えてください。

脇田さん 作り続けるというところが、展望じゃないですけど、僕の役割かなとは思っています。

こうして、大島さんの様に使っていただいている方がたくさんいらっしゃることを祈りつつ、少しでも役に立てるように。いいものが作り続けられたらいいなと思っています。

──これからも面白い商品が生まれることを、楽しみにしています。

脇田さん はい。こちらこそ、よろしくお願いします。

脇田さんは年間に50以上の商品を開発するそうですが、商品一つ一つに真剣に向き合い、試行錯誤の末に完成させていることが、今回取材をして分かりました。

開発者自身の「もったいないルーティーン」を変えたい気持ちから生まれた「1/1タンブラー」。

使う人の利便性も考えて、隅々までこだわって作られた「1/1タンブラー」の良さと、開発した脇田さんの情熱を、私は伝えていきます。

株式会社シービージャパン

〒121-0816 東京都足立区梅島1丁目36番9号
TEL:03-5888-1051
FAX:03-5888-1052

この記事の執筆者

大島 藍

都内企業にて飲食店経営を学び、2021年独立。フリーのコンサルタントとして、夢を追う個人や経営者の経営相談、広告記事製作、スタッフ指導などに当たる。
埼玉在住。趣味は畑と国内旅行。

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