デザイン性の高いステンレスマグやリビングポット。新しい生活スタイルを常に提案していくピーコック魔法瓶工業株式会社

大阪市福島区にあるピーコック魔法瓶工業株式会社は、1950年に創業。ガラス魔法瓶の製造販売から事業をスタートした。

その後、回転式魔法瓶など画期的な商品を次々と開発し、現在では2023年にグッドデザイン賞を受賞した「ステンレスマグ」や、2022年に同じくグッドデザイン賞を受賞した「ピーコックのおうち居酒屋シリーズ」、ホットプレートなどの電気調理器や、「保冷氷のう」、「ステンレス製まほうびん」など、豊富な商品開発を展開している。

時代の変化とともに消費者のニーズも変化したことで、当社は大量生産型の製造販売を主力としながらも、対お客様目線の商品開発とオンライン販売にも力を入れているという。

今回、ピーコック魔法瓶工業株式会社の広報・マーケティング部・部長の木村剛治さんに、商品の魅力や商品開発にまつわるエピソードについてインタビューしました。

ピーコック魔法瓶工業株式会社

木村 剛治さん

広報・マーケティング部 部長

ピーコック魔法瓶工業株式会社って、どんな会社?

──御社の特徴について教えてください

木村剛治さん(以下、木村さん) 1950年に創業し、2023年で73年目となる老舗の魔法瓶メーカーです。創業時は、魔法瓶を製造し東南アジアなどへ輸出する事業をしていましたが、現在は魔法瓶だけでなく、家電調理器やキーパー、ステンレスボトルやタンブラーまで幅広く製造販売しています。

全ての商品を弊社が開発・製造し、ピーコックのブランドをつけて販売しています。日本のホームセンター様や家電量販店様で販売することが多いですが、オンラインショップや、海外に向けた輸出事業も展開しています。

──木村さんのお仕事について教えてください。

木村さん 広報・マーケティング部の部長を務めています。

会社の変革を目指した2020年4月に新たに企画マーケティング部が発足し、商品企画とマーケティングを行いました。2022年4月に商品企画部が独立し、2023年4月から広報機能も加えて現在の、広報・マーケティング部となっています。

なぜこのような経緯があったかですが、これまでのようにメーカーは良いものを作れば売れる、という時代ではなくなってきたからです。

さまざまな流通チャネルが乱立し、ネット販売が台頭してきたことで、メーカー自身も直接消費者に商品の魅力を伝えていかなくてはなりません。

それに伴い個人のニーズも多様化したため、従来の大量生産型の商品開発だけでは対応できない面も出てきました。

そこで、市場のニーズをとらえ、それに合わせた商品開発と発信、ブランディングが不可欠となり、広報および商品企画、マーケティング事業が会社の一つの大事な要素となりました。

──創業当時、どのような経緯で魔法瓶を作られたのでしょうか。

木村さん 理由は2つあります。1つ目は、魔法瓶はもともと大阪の地場産業だったため、起業のハードルが低かったこと。

2つ目は、1950年とは第二次世界大戦が終戦を迎えて5年経った年であり、外貨を稼ぎ日本国へ貢献したいという思いからでした。輸出産業の一つとして、魔法瓶も進出していったのだと思います。

当時の東南アジアは水事情が悪く、一旦沸騰させたお湯を保温して飲む必要がありました。このため魔法瓶が重宝していたのですが、主たる使用者は東南アジアの現地人ではなく、進駐していた欧州人でした。

ところが第一次世界大戦が勃発したあたりから、本国からの供給が止まってしまったんです。

そこで、現地の需要が高まったことに狙いをつけ、日本の魔法瓶メーカーがどんどん東南アジアなどへ輸出するようになりました。

──なぜ、大阪は魔法瓶の地場産業だったのでしょうか。

木村さん 昔は魔法瓶は今のようにステンレス製が主流ではなく、ガラス製でした。ガラス製は今でも残っていて当社も生産しています。

大阪は特に1900年初頭からガラス産業が発展しています。天満には「大阪ガラス業発祥之地」という碑もあるほどです。

デザイン性の高い商品で、新しい生活を常に提案していく

──魔法瓶の他にホットプレートや、ステンレスボトルなど多くの商品が作られています。御社の商品開発について、詳しく教えてください。

木村さん 企画・マーケティング部を立ち上げる以前は、メーカー発想で昨年まで売っていた商品をさらに売れるように置き換えていくことを主眼として開発する方法が主流で、それで実際に売り上げを伸ばしてきましたが、市場の変化により、現在は世の中のニーズごとに企画を立案する方法に変わってきています。

消費者のニーズに着目し、企画を立案し、技術やデザインもオリジナルで設計、生産まで行っています。

どのように、ニーズを捉えているかは企業秘密ですが(笑)。今後も時代は変わり続け、生活スタイルは進化していくでしょう。

皆さんが気づいていない新しい生活スタイルを提案できるよう、商品開発ができたら良いなと思います。

──現在のイチオシ商品について教えてください。

木村さん 色々ありますが、「リビングポット」と、「ステンレスマグ」を挙げさせていただきます。

コロナによって、リモートワークをされる方が増え、昨今の電気代の高騰で節約志向も高まりました。

こちらの商品は、どちらもそういった方々のニーズを叶えた商品だと思っています。

リビングポット ピーコック魔法瓶 公式HPより引用

「リビングポット」は、真空二重魔法瓶構造のため、保温性と保冷性が高いです。

朝入れた温かいコーヒーやお茶が、長時間たってもおいしい温度を保ちます。(※)

冷蔵庫の開け閉めをする回数やお湯を沸かす回数が減るので、電気代も節約できます。

お客様がリビングポットを使うことで、少しでもリラックスいただけるようにと、スタイリッシュなデザインにこだわりました。2023年末から新色が登場。

※JIS規格に基づき、保温効力は10時間で64℃以上、保冷効力は10時間で10℃以下。

ステンレスマグ ピーコック魔法瓶 公式HPより引用

「ステンレスマグ」は、2023年にグッドデザイン賞も受賞した商品です。

こちらも、真空二重構造で保温性と保冷性に優れています。

手元に置いておけるサイズなので、お茶やコーヒーといった飲み物だけでなく、スープを飲むときにも使うことができます。蓋付きであるので、ゆっくり飲み物を楽しんでいただけます。

真空二重構造なので、普通のマグカップとは違い、結露しにくく熱くて持てないといったこともありません。

おうちやオフィスはもちろん、キャンプやピクニックなどアウトドアにも持ち運べるので、どこでも心地良い温度の飲み物とデザインを楽しめると思います。

こちらは、内部に目盛りもある点も特徴のひとつです。

色はホワイト、ダークブルー、グレー、イエローの4色を展開しています。

開発にともなう思い出深いエピソード

──開発にまつわるエピソードについて教えてください。

木村さん 魔法瓶の開発では、1968年に回転式の魔法瓶を開発したことが弊社らしいエピソードかと思います。

創業時は輸出向けの魔法瓶を製造していましたが、1960年頃から家庭に主婦がいるライフスタイルが日本で広がりました。

「いちいち、やかんでお湯を沸かしていられない」という主婦のニーズが高まり、一家のテーブルには必ず一台以上魔法瓶があるといわれるほど、日本でも魔法瓶ブームとなりました。

当時は魔法瓶組合に所属するメーカーが50社以上あり、一斉に魔法瓶を作っていたのですが、その中で各社がこぞって花柄ポットを生産し、ヒット商品となり「魔法瓶は花柄でないと売れない」といわれていました。

しかし、当社の創業者である山中雅文が「花柄だけじゃ面白くない。他社にはない工夫を加えたい」と考え続けた末に、底が回る回転式ポット(※)を開発しました。

これが大ヒットしたんです。

それからは、「回転式でないと売れない」と、いわれるようになったそうです(笑)

※ どこからでも注ぎやすいよう、底がクルリと回転するポットのこと。

──最近の開発にまつわるエピソードも教えていただけますでしょうか。

木村さん 2020年に企画・マーケティング部を立ち上げて最初に作った商品が、「タンブラーボトル」です。

従来のボトルは温度を保ったまま持ち運ぶことができる、キャリータンクとしての機能面を重視した商品でした。しかし、中身を美味しく香りまで楽しみたいとなると、従来の形とは違うのではないかという話が出てきました。

そこで、我々はボトルとタンブラーの2つの機能を組み合わせた商品を作ろうと考えました。ボトルの機能は保温性がしっかりあり、かつ密閉して持ち運ぶことができます。

一方タンブラーはコップの形状であるため、香りを楽しむことができる機能があるのです。

この2つの機能をハイブリッドしたのが「タンブラーボトル」でした。

「タンブラーボトル」が世に出た後、同じような商品を作るメーカーが増えて、一つの新しい市場が出来ました。

競争相手がいることで、さらにそのカテゴリが活性化されていきますから、嬉しかったですね。

──コロナ禍では、人々のニーズが大きく変化したかと思います。どのような商品を作りましたか。

木村さん おうちで皆さんが楽しめるホットプレート」などの様々な家電調理器を作りました。

煙の出にくい減煙式の「電気焼肉機」は、ヒットしましたね。

また、コロナで外食ができなかった時期は、お店の定番メニューである串カツを自宅でも作れる「テーブルフライヤー」を開発。

卓上で、家族で囲みながら串カツを作れる商品になっています。

電気焼肉機  ピーコック魔法瓶 公式HPより引用

「ピーコックのおうち居酒屋シリーズ」では、お酒のための魔法瓶の酒器開発をしました。ビールのためのタンブラーや焼酎のためのタンブラーなど、お酒の種類ごとに提案しています。

単品では他社さんも取り組まれているのですが、お酒の種類に合わせて複数の商品を開発し、シリーズとしてまとめて提案しているのは弊社だけかと思います。

「ピーコックのおうち居酒屋シリーズ」の企画ではお酒好きのメンバーを集めました。お酒の種類ごとにベストな温度や味をあてがえるよう、「日本酒ではこうでないと」「ビールと酎ハイは違うよね」など喧々諤々(けんけんがくがく)、大いに盛り上がりました。

お酒好きの方々と、色々話し合えたことは楽しかったですね。

ピーコックのおうち居酒屋シリーズ  ピーコック魔法瓶 公式HPより引用

──2023年は猛暑でしたが、猛暑に備えた商品もあったとか。

木村さん 2023年の夏だけでなく2022年の夏もかなりの暑さで、熱中症など体調を崩される方が多かったですね。

そこで、我々に出来ることはないかと考えて出来たのが「アイスパック(保冷氷のう)」です。

氷のうを魔法瓶に詰めて、外でも冷たさをキープしながら体の冷やしたいところを氷のうで冷やすことができます。こちらも、新しさが受けてヒット商品となりました。

SDGsへの取り組み

──御社のSDGsへの取り組みについて教えてください。

木村さん マイボトルの普及活動や街中の給水サーバーの設置、「おおさかマイボトルパートナーズ」の参画を行っています。

マイボトルの普及は日本でも少しずつ浸透してきたものの、海外に比べるとまだ多数派ではないように感じます。

日本は自動販売機やコンビニで簡単に飲料が手に入りますので、なかなかマイボトルの普及はハードルが高いと感じていました。でも昨今は物価の高騰などの影響で、じわじわとマイボトル派が増えているように感じますね。

マイボトルは、特にアメリカでは当たり前の習慣となっているようで、ホテルに行くと無料で利用できる給水設備が設置されているそうです。

弊社でも、大阪市の水道局さんと協賛し、給水器を設置する活動を行っています。

また、大阪府の「マイボトルパートナーズ」に所属して、マイボトルを普及するための活動にも参画しています。

今後の展望について

──今後の展望について、教えてください。

木村さん 他社の魔法瓶メーカーのなかには知名度が高く、老舗のメーカーさんがいくつもあります。

弊社は、商品には自信はありますが、認知度としてはまだ今ひとつといったところ。多くの方に少しでもピーコック魔法瓶工業株式会社と商品を知っていただき、使っていただきたいです。

時代の変化が早くなり、人々の生活スタイルも多様化しています。だからこそ我々は常に、より消費者様の目線に立って寄り添えるような商品開発をしていきたい。

広報・マーケティング部としては、ブランド認知を高めていくような活動をしていきたいと思っています。

ピーコック魔法瓶工業株式会社の公式サイト『Peacock』では、さまざまな人のニーズに合った魅力的な商品が紹介されています。ぜひご覧ください。

ピーコック魔法瓶工業株式会社
創業:昭和25年9月1日

所在地:〒553-0002 大阪市福島区鷺洲5丁目12番20号
事業内容:下記商品の製造・販売(日本全国並びに輸出
ガラス製魔法瓶、ステンレス製魔法瓶、電気ポット、電気ケトル、ステンレスボトル、ランチジャー、フードジャー、キーパー、電気調理器

この記事の執筆者

荒川 あい子

ライター。インタビュー記事やコーポレートメッセージなどの執筆を行う。趣味は旅行、映画鑑賞、読書(主に映画評論、SF小説)

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