株式会社アクアバンクは、2011年の設立以来、ウォーターサーバー「AquaBank」のレンタル事業を軸に成長を続ける企業です。
独自の研究・開発力を強みに新たなビジネスモデルを開拓しているほか、持続可能な開発目標「SDGs」の目標達成へ向けて躍進しています。
今回は、アクアバンクの先進的な取り組みと、豊かな環境をつなぐ挑戦についてご紹介します。
株式会社アクアバンク
平田 優一郎さん
IR広報部 部長
アイデアのヒントはお客様の「本音」
──初めに、アクアバンク設立の経緯について教えてください。
2011年、代表をつとめる竹原タカシが「水素のチカラで世界の人々の健康寿命を延ばす」ことをミッションに掲げて当社を立ち上げました。
竹原はもともと、90年代後半から2000年代初頭にかけて、異なるビジネスを展開していました。
その中の一事業で、ウォーターサーバーを取り扱おうとしていたのですが・・・。
メーカーヒアリングを通して受けたのが、
ウォーターサーバーはボトルの置き場所に困るんだよね
3000円台の定額制だったら契約するんだけど…
という本音だったそうです。
当時は今ほど一般家庭にウォーターサーバーが普及していない時代。街中では病院の待合室などでしかその設備を見かけず、ウォーターサーバー=一般家庭には手が届かないものというイメージが残っていました。
一方で水道水を飲料水として利用する人は減り、「水道水の不純物をろ過してきれいな水を飲みたい」というニーズが増えた時代でもあります。こうした状況から、多くの家庭では浄水器を付けたり、宅配水を購入して飲むようになりました。
そのとき竹原に、ある疑問が浮かびます。
「水道水を飲めばいいのに、なぜお金を払ってまで水を買うのか?」
その答えは、いつでも簡単に冷水・温水が使えるから。
「では、浄水器とウォーターサーバーが合体したら、浄水器や宅配水をわざわざ買わなくても安全で美味しい水が飲めるんじゃないか?」
こうした考えをもとに浄水器でも宅配水でもない新たなビジネス、浄水型ウォーターサーバーのアイデアが誕生し、当社のビジネスがスタートしました。
目に見えないからこそ、安心して飲んでもらいたい
──アクアバンクでは、水道水からミネラル水素水をつくるウォーターサーバー「AquaBank(アクアバンク)」を軸にビジネスを展開されています。創業以来、「水素」に着眼し続けている理由について教えてください。
2007年、国際学術誌『ネイチャー メディシン』で水素の抗酸化作用に関する論文が発表され、社会的にも水素の力が注目されはじめました。
この流れを受け、浄水機能だけでなく、水道水からミネラル水素水をつくるウォーターサーバーを開発したいと感じました。
もし実現できれば、より多くの人々の健康をサポートできるかもしれない、と考えたのです。
しかし水素は分子量が小さく保存が難しい性質を持っており、JIS規格でも認証されていません。また濃度の測定方法が規定されていないほか、無味無臭で目に見えない物質です。
「これは水素の入った水です」と言われても、見た目や味が普通の水と同じであれば、不安になりますよね。
そのため当社では、ビジネスを始める大前提として第三者機関によるエビデンスの取得を重要視しました。商品の安全性や性能を公平に判断することで、お客様に安心していただきたいと考えたのです。
実は、代表の竹原は研究者としての顔を持っています。アクアバンクでのビジネスにあたっても、研究者と経営者、両方の思考を組み合わせて事業を確立してきました。
目に見えないものを扱うからこそ、エビデンスの確立を怠らないこと──この考え方は、現在も私たちの基本姿勢になっています。
その後、水素の測定方法に関する特許を取得。第三者機関の証明書付きのミネラル水素水ウォーターサーバー「アクアバンク」の製造・レンタル事業が本格的にスタートしました。
お客様からは、「定額で高品質な水を使用できる」と喜びの声をいただいています。ボトルの上げ下ろしも不要なため、高齢の方でも使いやすく、年代を問わずご利用いただいている印象です。
健康寿命の延伸へ。幅広い視野で研究開発に挑む
──教育機関や地方公共団体との共同研究も進められているとか。
水素が持つ力を確かめるべく、筑波大学大学院の矢田幸博医学博士監修のもと水素ガス吸引による心理的・生理的機能への効果を検証しました。
試験を重ねて見えてきたのは、水素を吸うことで脳が活性化し、高齢者の認知機能やスポーツ選手の動体視力などが向上すること。そのほかにも美肌作用や睡眠効率改善など、さまざまな効果を期待できることが分かってきました。
その後、鹿児島県の西之表市で認知症リスクの削減試験を行いました。
この試験では、認知症リスクの高い方を対象に水素ガス吸引による効果を検証。結果、吸引によって水素が自律神経系へ作用すること、副交感神経への作用によってストレスが低下すること、認知症への予防効果を期待できることが分かりました。
──アルツハイマー型認知症は根本的な治療薬が見つかっておらず、高齢化が進む地域では特に、水素を活用した発症予防に期待が高まります。その他の取り組みについても教えてください。
神奈川県の鎌倉市役所で行った水素ガス吸引による健康保持増進事業では、職員100名を対象に2ヵ月間にわたる長期間試験を実施しました。
日常的に水素ガスを吸引できるよう吸引具を貸し出したところ、 職員の脳ストレスの低下、血圧の低下、パフォーマンス改善へつながることが見えてきました。
こうした試験結果を受けて開発・改良を進めてきたのが、水素ガス吸引具です。水素ガスは体内に留まらないため、いつでも水素を吸引できるよう持ち運びに適した大きさであるべきと考え、ポータブル型の水素ガス吸引具「KENCOS(ケンコス)」を開発し、2017年から発売しています。
さまざまなお客様のライフスタイルに寄り添い、あらゆる場所・時間で人々の健康を支えたい──そんな当社の思いが形となった「KENCOS」は、健康意識の高まる海外諸国でも取り扱いが活発になっています。
独自のビジネスモデルで持続可能な社会を実現する
──コロナ禍以降、人々の生活が大きく変化しました。ウォーターサーバー業界ではいかがでしょうか。
そうですね。在宅勤務の割合が高くなったことで、家庭における水の消費量も圧倒的に増えました。これまで宅配水を購入していたお宅でも、定額制のウォーターサーバーへ切り替える方が増えている印象です。
一方、当社のウォーターサーバーは水道水を使うため、定期的なボトルの宅配が不要です。非接触でサービスを受けられる点から、コロナ前と変わらず多くのお客様にお選びいただいています。
──今年1月にはSDGs事業認定※を取得されました。この認定をどのように受け止めておられますか。
※SDGs事業認定…一般社団法人 日本SDGs協会が実施している認定制度。企業をはじめ各種SDGsの取り組みが17あるゴールのどの目標に向かっているか審査・認定している。
持続可能な開発目標「SDGs」とは、2030年までに持続が可能で、よりよい世界を目指す国際目標です。17個の目標と169個のターゲットが掲げられています。
代表をはじめ、社員一同たいへん嬉しく思っています。当社はウォーターサーバー事業において水を運ばない「ZEROWAY(R)※(ゼロウェイ)式」のビジネスモデルを続けてきました。
※ZEROWAY(R)式…水(ボトルなど)の宅配が不要なウォーターサーバーのサービスモデル
ウォーターサーバーは水の入ったボトルをお客様のご自宅へお届けし、空になれば回収するという「2WAY式」と、使い終えたボトルをお客様のもとで廃棄する「1WAY式」のモデルがよく見られます。
しかしこれまで、運送の際に排出される二酸化炭素や使用済みボトルから生まれるプラスチックごみが課題になっていました。
一方で「AquaBank」 は水道水を使用するため、水の配達やボトルの交換が不要です。ボトル交換式の宅配水が当社のウォーターサーバーに置き換わった場合、1年間でレジ袋約120枚分と同量の二酸化炭素削減効果があるとも言われています。
まずは、当社の商品を多くのお客様に使っていただくこと、さらにはこうしたビジネスモデルを広げていくこと。それにより、環境保全や社会課題の解決といった側面でも貢献していきたいですね。
アクアバンクは、企業活動とウォーターサーバー事業において
持続可能な開発目標 17項目のうち4部門で認定
──今年2月には新商品「アクアバンクAdvance(アドバンス)」のレンタルサービスを開始されたと伺っています。こちらではミネラルやシリカの入った水素水を精製できるとか。
「AquaBank」を全面改良した「アクアバンクAdvance」では、新たに開発したカスタマイズディスク※を採用しています。
※カスタマイズディスク…ウォーターサーバー内に組み込まれる浄水装置。「アクアバンクAdvance」ではディスク型のカートリッジを組み合わせて高機能水を精製する
水をきれいにろ過するだけでなく、ディスクを通してシリカやミネラル成分を溶出させることで、より高性能な水を作りだします。お客様のライフスタイルや嗜好に合わせて美容・健康をサポートする新商品です。
ここで使用されているシリカはお米のモミ殻を原料にしています。玄米を作る過程で大量に廃棄されるモミ殻を活用することで、資源の有効活用を実現しました。
またモミ殻の燃焼時に排出される二酸化炭素は、稲が大気中から吸収したものに由来するため、カーボンニュートラルとしても扱われます。
さらに業界では初の試みである、使用済浄水カートリッジを利用した「再生浄水カートリッジ」の提供を開始しています。
ウォーターサーバーに使用されているカートリッジは交換のタイミングで破棄していましたこの度、再利用の仕組みを整えたことで、繰り返しご使用いただけるようになります。こうした取り組みを通して、家庭・会社ではじめる身近なSDGs活動に貢献していきたいですね。
「なぜ?」を追い求める姿勢が強みに
──アクアバンクでは常に、現場の声を重視した組織運営をされている印象です。
当社の社是には「必要は発明の母なり」というエジソンの言葉がありますが、この言葉通り「こんなものがあれば良いのに」「なぜこうなっているのだろう?」という消費者目線の疑問をビジネスのヒントにしてきました。
またカスタマーセンターを社内に設置し、社員がお客様の声を直接伺っています。情報共有を迅速に行い、改善へ向けて動き出せる体制が整っているのは、現場の声を重視する姿勢があるからこそ。
これからは「なぜ?」を突き詰めると同時に「もっと何かできるはず」という精神を持ち、現状より良いものを追い求めていきます。創業以来、水素にフューチャーしてきましたが、人々の健康寿命延伸に寄与する商品・サービスであれば積極的に取り組んでいきたいと考えています。
良質な日本の水を、未来にも
──今後のビジョンや方向性についてはいかがでしょうか。
ウォーターサーバー業界を活性化し、同時に環境保全へ貢献するパイオニア企業でありたいです。世界的に見ても日本の水道水は質が良く、衛生的だと言われています。一方で、水道水を直接飲むという人は多くありません。
だからこそ当社の技術を活用することで、この先も沢山の人にきれい美味しい水を飲んでもらいたい。そのためにも「アクアバンクAdvance」のような独自の付加価値をつけた商品・サービスを展開していきます。
こうした取り組みの結果として、水道水の使用量を上げ、地方自治体を盛り上げることも目標の一つです。事業全体を通して、水道水の活用促進と保全を両輪で叶えていきたいですね。
株式会社アクアバンク
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